2015年9月30日水曜日

紀伊ハンター 2015

シルバーウィークは日祝日の連休に定休日も繋がる。ここぞと、紀伊半島を巡りました。


初日。

仕事が明けて、遅い午前の、のぞみ号は西へかっ飛ぶ。

新大阪駅よりレンタカーで一気に南下。

天気は上々、こころ晴れ晴れ。

解放感。

それーーっと言わんばかりに高速に乗って、阪和道をひた走り。

東京から名古屋も超えて西に来ると、独特の、浮き立ってくる気持ちがあります。


阪和道をみなべ町で降りて釣りエサ屋さん。

スゴイ!!! なにこれーーーっ!

おおきな水槽はまるで水族館でした。

南紀で釣れる魚のメニューが泳ぎまわってるといいますか。

釣り人を鼓舞させるうまい演出であります。


店員さんにお願いして。

購入したザリガニをイシダイ君に進呈。

人慣れした彼(彼女かも?)はザリガニをくわえた途端に走る。

横取りしようと複数のタカノハダイが追いかけます。

磯の王者とはいえ、逃げるのですね。

だけど賢い。

ザリガニを口のなかに隠しているので、やがて追っかけはエサがないのかと諦める。

ここを確認してから、バリバリと噛む。ゴックン。ぷっと吐き出すカケラ。

「で、おかわりは?」

また水面に顔をだすイシダイ君の瞳が印象的でした。




南紀には、4年ぶりでした。

前回の記憶に鮮烈だった日置川(ひきがわ)の河口。

まだ陽があるので、竿を出すかということに。

山肌に囲まれ、濃緑の水をたたえた美しい汽水域。


陽の落ちかけた時。

コツンときて、キューンと走ったコダイ。

ヒレに浮き立つパープルのあしらい。

放そうとしましたが、掛かりが悪かった。ごめんなさい。

このあと、もうひとまわり大きいのも来ましたが、こちらも飲まれた。ウデだ。反省。

ちょうど、お隣には3世代のグループ。

坊や、お父さん、おじいさん。日置川の地元の方が、快くもらってくださり、ヨカッタ!


お隣の3世代は、グーフの猛攻に遭っていました。

私と同行のヒツジ=釣り執事といえば、この方たちの猛攻。

お馴染みのゴンちゃん。

今回の「紀伊ハンター2015」の主役になられる方々であります。

とにかく、凄い、全国一律、海のナマズ・ゴンちゃんは、グーフ以上の最強?

精魂が尽きてきて、寝場所を探しました。


車中泊。

夜はカーナビをいじって、、、、テレビに変えて、、、、、、ここ入らんし。

お泊り場所は、道の駅、大きな駐車場のある郊外型のコンビニ、港の外灯の近く。

湯浴みは、露天、日帰り入浴、銭湯、スーパー銭湯、地域活性の温泉施設、、、、。

すっかり慣れてしまいましたが、たまには、平らな所で眠りたく。

ふと、子どもの頃の土曜日21時。

チバちゃんの大活躍を想い出したりしてるうちにZZZZZZZZZZ。

キイハンターよ、永遠に、ああ、ZZZZZZZZZZ。


2日目の朝。

目覚めて、目にとまったツユクサ。

朝のしずくをたたえて咲く可憐な紫の花姿。

南紀は、まだ夏の名残なのでした。


日置川の橋のたもとの喫茶・軽食。

モーニングは、この華やかさ。野菜、フルーツたっぷりで、トースト、コーヒー。

プレート上の、ユカリののったお粥が和歌山ならではを実感。

梅の国、紀州。

ただ、豪華なモーニング加減は、名古屋文化圏の匂いもほのかに?


とりあえず突端部へ。

紀伊半島を一周する国道42号線。

日置川から周参見を抜けて、串本、潮岬まで来ました。

橋のかかった紀伊大島の高台から潮岬側を眺める。

本州の最南端。まだ、すっかり夏でした。



トロピカーナ!!!

最南端ですから、ハイビスカスも咲いています。

注ぐ陽光、緑の葉のなかに赤い花の点在、南国ですね。


紀伊大島・樫野崎にあるトルコ記念館を訪ねる。

これは、ヒツジのリクエスト。

南紀に、なぜトルコ共和国なのか?

不思議に思っていた私。

それには、あまりに悲しい事故がありまして。

明治23年、トルコの使節として来日した戦艦エルトゥールル号。

帰りの航路で暴風雨に遭い、この樫野崎にて座礁。

多くの方が亡くなりました。

エルトゥールル号は、たいへん旧式な船であるにかかわらず、

無理をおして、日本までやってきての帰路のことでした。


記念館の展望台より見下ろす事故・座礁付近。

岩が露出して潮流れのとても速い難所であるとか。

日本での歓待を受けた将兵587名もの方が亡くなったなかで、それでも、

村人たちが懸命の救助を行い69名が助かったということです。

日本にとって、世界屈指の親日国でもあるトルコ。

その架け橋の一端となった事故の現場にたたずみ、偲ぶことしばし。


気持ちを変えて。

串本港にてひと振り。

まわりは、ウキ釣りやサビキ釣りで賑わっていました。

護岸をびっしり埋め尽くす釣り人、シルバーウィークの効果は抜群か。


投げ釣りでは、とりわけ小さなこの子。

ソク放流。

あとは、ノースベッドグーフ(キタマクラ、ベタですね)の数珠つなぎ。

サビキ釣りでは、カワハギが釣れていて期待したのですが、、、、。

でも、明るい時間は、ゴンちゃんが居ませんのでちょっと気持ちがラク。


串本の名所・橋杭岩付近は国道42号線が大渋滞。

なんとか切り抜けたところ鯛島(というカタチの島)の横のドライブインで昼食。

お弁当スタイルの定食でした。

うまし!


西日が傾く頃。

喧噪の那智勝浦港にてひと振り。

眼前には、全国に名を轟かす、超巨大観光ホテルが横たわる。

すごか。聞きしに勝る規模と賑やかさ。

エントラントには、独行船で付けるお着きになっていまして。

船が着くたびに、打ち鳴らされる太鼓。従業員の方々の揚がる気勢。

水辺のテラスでは、夕食まで釣りを楽しむお客さんたち。

見とれてしまい、サビくハンドルも止まりがちに。


それでも、ブルっ、ブルルルルルーン。

太鼓に負けじと、この方が私の胸を叩いてくれました。

よしっ!

続きます、いい感じ。全国一律の、いい感じ。やるなあ、さすが那智勝浦。

と、思っていた矢先、ゴンっ、とか、コンっ、とか。

ゴンちゃん。

キスの時間は短くて、あとは、ゴンちゃん一族のお着きのようでした。


3日目。

新宮市の熊野川河口より、上流側を望む。

これから分け入る山の深さを想いながら、、、しばし陶然となる河口のたたずまい。

対岸の紀宝町は、いよいよ三重県。

河口は、和歌山と三重の県境になっていました。

三重側には、製紙会社のコンビナートがそびえたつものの、

目指す「川湯」に、色めきたっていたのです。


熊野三山。

霊山のしずくを、集めて流れるという熊野川。

絶句。

河岸に降りて、川遊び、鮎釣り、いつまでも眺めていて飽きない熊野川。

山と川のチカラが、紀伊半島の沿岸を潤すのでしょうか。


熊野川の支流にある、川湯に到着。

さっそく水着に着替えての湯浴み。

川原にたちこめる硫黄の臭い。

小石を掘り起こしていくと、こんこんと湧き出てくるお湯の熱いこと。

川水とのうまい塩梅の温度調節が、長く浸かるコツのような。

お湯に寝そべりながら、川遊びを眺める。


お湯で身体を温めたところで、渓流をシュノーケリング。

最初は、勇気と根性が必要でした。

渓流ですから、冷たい。さむし! であります。

でも、戻れば、温泉があるから、あそこへ戻れば、温かい。

ちいさなウグイの群れ、アユの姿も見ることができました。

で、温泉に戻る。ひと息をつける。また意を決して渓流へ。

これの繰り返し。

たいへん楽しめました。

でも9月の下旬、こんなことしてるのは、私以外は子どもたちだけやんけ。


奈良の県境を超えて十津川峡谷へ入る。

川湯での、お湯と冷水の洗礼から上がり、ぼーっとなってました。

峻険な山間を流れる川原では、流し網漁が行われてました。

落ち鮎の季節ですね。

駐車場で売られていたコンニャクを食べながら、山あいの暮らしを想う。


十津川でUターンして、再度、南紀の田辺(海岸側)を目指す。

熊野三山・熊野本宮前は、シルバーウィークとあっての、大渋滞。

熊野川河岸の特設駐車場は、休日の「ネズミーランド」のようになっていました。

だから、渋滞中の車窓から撮れた一枚ですが、熊野三山、世界遺産。すごい人気。

左側では、これから婚礼を行うカップルと、とりまく人々。

ヤタガラスが、大団円となってましたが、元々こういうマークですね。


話題のトレッキングコース。

せっかくだからと、ほんのちょっとだけ歩いてみました。

といっても、紀伊半島の山岳部、沿岸部を問わず、すべての人跡が古道なのでした。

生活の道、物流の道、参詣の道、修験の道、そもそもが、最初は獣の通り道。

私の生地にもいろいろな経緯の道がありますが、ひとつ感じたこと。

熊野の道は、安易に歩いたら、助からないような気がします。

山のきびしか、きつか。おそろしか、、、、、。

いつか、仕事をリタイヤした時に、挑んでみたいと本気で思いました。


再び、海辺に出たのは、富田川(とんだ)の河口。

白浜町のすぐ近く。

目指したちいさな堤防には、先客のみなさま。

手前のファミリーは、夕刻になれば帰るね。

先端のチヌ師は常連師、毎日釣ってる風、掛かるまで止めないね。

ヒツジとのやりとりのち、この場所は離れました。


4年前に来た時、そして通過しただけの昨日、と、気になっていたドライブイン。

なにしろ、「珍奇植物研究所」を併設しており、ただものでないことは確か。

国道42号ぞい、釣りエサ店さんから道を隔てた対面。

遅い昼食をとろうと、勇気を出して入りました。


店内は、いたって普通。

カウンターがあり、テーブルがあり、コミック、雑誌が充実。

ご夫婦で経営されているようでした。

しかし、窓側には、サボテンの生える大きな温室が展開され、思わず見入ってしまう。

すごし! やはり、ただものではありませんでした。

釣り人とおぼしきグループが釣り談義の真っ最中。

対面は釣りエサ屋さんだし素敵な環境だ、とヒツジが絶賛。

ヤキソバのダブルと小ライス。

うまし! うまし!

なぜか、この小ライスをつけてしまうのが、西を旅する時の流儀のような。


再度、串本をまわりこみ、古座川の河口でのひと振り。

こちらも紀伊半島の川の美しさを象徴する海との接点でした。

ヒツジは、しょっぱな、なにか惜しいことがあったそうで、鼻息があらくなってます。

そんなチャンスは、まだいくらでもありそうな、古座川河口の雰囲気。


私といえば、アタリは頻繁。

でも掛かってくるのは、この方。そして、、、、、、主役の、、、、、ゴン。

グーフ、ゴン、グーフ、ゴン、グーフ、ゴン、グーフ、、、ゴン、グーフ。

精魂尽きました。

「グーフが寄ってたかってザリガニまで齧ってくる!」とヒツジ。

川遊びで疲れていたこともあり、私は近隣のコンビニ駐車場にて、ZZZZZZZZZZZZZZ。

ヒツジは粘って、地元のうなぎ師との釣り談義は3時にまでおよんだとか。


4日目。

気をとりなおし、早い時刻より行動。

太地町に向かう途中の入り江にてひと振り。

しかし、次第に南から前線が近づいており、海は荒れ気味。

入り江にも濁りが入ってきていました。

グーフ。朝いちからグーフ。たまりません。


背後の小さな川は美しい。

川と海とのあいだで営まれてきた暮らしをうつす集落。

ただ、ヒツジ曰く。

カメラを持ってぶらぶらしてると怪訝な顔をされるとか。

ヒツジよ、もろもろを改めなさい。


もったいない!!!

大きな捕鯨船の姿に、思わず声が出てしまった太地町。

言わずと知れた、捕鯨の町。

捕鯨が外圧により抑制されて、リゾート開発されたなかに展示された船。

太地の方々の、口惜しい想いが伝わります。

うううう、ゲイカツ、食べたかねえ、、、、。尾の身、塩クジラ、、、、。


ゲイカツは無理ですが、熊野川を渡った紀宝町の喫茶・軽食。

いきおい、カツカレーを注文してしまいました。

紀伊半島を一周する国道42号線は、個人経営の、喫茶、軽食、ドライブインが充実。

私の子どもの頃の、懐かしい国道の風情がたくさん残っています。

同時に、半島を一周する高速道の完成が近い。

人の流れが変わってしまうと、これら個人店は、、、、、、心配なのです。


汽車を見つければ、ヒツジは撮ります。

熊野市駅に停車していたディーゼルカー。

とりわけ、この色の汽車には感応するダッシュ力が違うようですが、不満も。

中身が、もっと古くないと駄目なそうですが、私にはよく分かりません。

ヤレヤレ、、、です。


熊野市からは山側へ入る国道42号線をそれて、険しい海岸線をなぞる。

目的地のひとつだった、新鹿(あたしか)海岸に到着。

澄んだ川水が砂浜へ注ぎ込む、白砂の海岸。

さっそくシュノーケリングしました。


海の水の温かいこと!!

その透明度もあいまって、ずっと泳いでいることができました。

むしろ、水から上がると寒くてたまらない。

また海へ。

ボラの群れ、ひらべったいアジの群れ、メジナの群れ、、、すごし!!!

おおきなモクズガニが小岩の影で出たり入ったりしてました。

ヒツジは、手づかみによる捕獲を試みましたが、難航。

なかなか川のなかのようには勝手が行かないと話していました。

モクズガニが川から海へ降りるようになると、秋なのだとか。

温かい海水でも、野生の生き物は、秋のおとすれに敏感なようです。


友情出演。

モクズガニ。

各地でヅガニ、ツガニ、カワケガニなど、シコ名は多々。

写真は他日に、別の場所にて捕獲されたもの。撮影のあと海へ戻る。

両鋏に、グローブのような毛がふさふさしていているのが特徴。

ヒツジによれば。

「川と海の使者」

「川の環境基準をはかるバロメーターのひとつ」

なのだそう。


国道42号線からそれた国道311号線。

熊野市と尾鷲市の、海洋に突出した険しい岩山と入り江の集落をつなぐ。

JRの紀勢線がほぼ平行しており、それはまた、熊野と伊勢をつなぐ道。

つまり、計り知れない歴史を持つ「古道」なのでした。


磯釣り注意、の看板。

この入り口付近には、多くのクルマが停まっており、みなさん注意しているでしょう。

小道の向こうには、さぞかし、すごい釣り場が待っている?


古道ゆえに、傍らには、彼岸花。

彼岸花は曼珠沙華、モモエちゃん、突然、歌い出したりして。

紀伊半島の山、川、海、、、めぐっていると、自分のなかの野生が目覚めるような。


賀田湾の港。

インスピレーションで入ってしまった食堂。

これが大当たりでした。

泳いだあとは、お腹が減るので、食の引き当てにも敏感になる。


ホルモン炒めを注文したところ、超激うま!!!

うまし! うまし! うまし! うまし! うまし!

奥さん曰く、ホルモンとはいえ、鹿のもも肉を処理して味付けしたものとか。

さらに注文の炒飯(サーバー上の写真点数により残念ながら割愛)も、

濃厚なエキスの浸み渡るうまさ。うまし! うまし! うまし!

炒飯は、豚ではなく、猪肉(本シシ)を使用。

すべてご主人が山で獲ってきた獣がベースなのでした。

鹿と猪は、作る人が作れば、激うまなのだ。

日本の、遥かな歴史あるジビエの数々に、感嘆の食堂に巡り会える!!!


それからというもの、、、、。

船揚げ場にいた、カラスとトンビの子どもの集会。

カラスが、トンビの子どもに飛び方を教えていたり。

鳥類の異種交流に、感動しました。


海辺は、隔絶された絶海の岩肌ばかりだったり。

紀伊半島の、自然の幅広さ、暮らしている方々の苛烈さを想ったり。

はらわたに宿った野生の食。

体力が一気に回復したようで、冴え渡るストップ・アンド・ゴー!


山間の駅に、汽車もやってきていました。

海蝕崖を縫うように、カーブとトンネル、あがったりさがったり。

よくこんなところに線路を通したものだ、、、、、、矢鱈と元気になるヒツジ。


秋につぼみを開くサクラがあったり。

コスモスではありません。

原種、原木、なまのサクラを魅せてくれた紀伊の山、川、海、そして集落。


尾鷲港に着いた時は、すっかり夕暮れ。

右手には、火力発電所の灯りが見えます。

暗くなっても釣りました、、、雨がパラつきはじめ、、、でも釣りました、、、が。

ゴンちゃん、ゴンちゃん、ゴンちゃん。

ヒツジは針をめいっぱい大きく(20号)、エサもサバやキビナゴにしましたが、

どうしても掛かってくるのは、ゴンちゃん。

主役は譲れないようです。さすが、なんでも食べる海のナマズ様ゴンちゃん。

日本の沿岸の、暖かい時期の主役は、ゴンちゃんかグーフ。

もう止めなはれ、、、と言わんばかりの土砂降りになりクルマへ駆け込みました。


5日目。

最終日。名古屋駅にクルマを返して帰る日。土砂降り、さらに激しく。

尾鷲から国道42号線をたんたんと走り出したのですが、まだ時間はある。

国道260号線にそれて志摩・伊勢を経由。

日本有数の観光地は、名物「牡蠣」の看板が目立ってくる。

カキフライ、いただきました。でもまだ、本番でないような。

伊勢道・東名阪道を走るとみるみる増えてくるクルマの数。

それは、日常が近づくことを知らせるクルマの数。

紀伊半島に抱かれた5日間、あまりに名残惜しく。

また行くからね、ゴンちゃん、グーフのおのおの方!!!

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