縁あって、年に数度の、金沢行き。パックロッドをしのばせて向かったのですが、、、。
上越新幹線の車内放送がこう告げる。
「本日は積雪と強風のため、お乗り換えのはくたか号は長岡始発となります」
えええっ。通常の越後湯沢でなく、長岡駅ですか?
着いた長岡駅では、たくさんの人が、はくたか号を撮影していました。
長岡発の、はくたか号は、そう珍しいことではないらしい。
雪と強風は常套の北陸路。ほくほく線の内陸路、海側を走る信越線。状況に応じてのコースの選択を、空模様を窺いながらの運転。これも春先の北陸路を行く、醍醐味といったら鉄道関係者の方々に失礼でしょうか。
そして、はくたか号の運転は、3月13日まで。翌日3月14日からは、北陸新幹線の延伸が開業して、この電車に乗るのもきっと最後になるのです。
はくたか号の名前だけは、新幹線になっても残るそうですが、、、、、、。
一面の雪景色のなかを疾走する、はくたか号。
東京はドピーカン、からっ風。こちらは雪かみぞれ。とりわけ冬は、そこを実感します。
海辺も走ります。信越線、直江津からは北陸線。
日本海は大時化。北西風を喰らって、はくたか号は時折すごく揺れます。
クルマで高速道路を走っている時、横風を受けて、おおっ、となる感じでしょうか。
通常の「ほくほく線」とはまた違った車窓に、新鮮味を感じてしまう。
運転廃止の直前にきて、貴重な体験をしていることに、ちょっぴり嬉しかったりして。
大時化の日本海とは裏腹に、車内は暖かい。
このコントラストが、日本海側を旅する旅情のひとつ、といっても過言でない。
と、、、、ここまでは、平穏な金沢行でした。
急遽、急停止する、はくたか号。どうしたのか? えええっ。
「お客さまに申し上げます。だだいま、強風のため、先行する列車の運行を見合わせております。運転が再開されましたら、順次、進めてまいりますので、いま、しばらくお待ちください」
車内放送。これは、冬の北陸路では、よくあるケース。致し方ないのです。北国の人が、我慢強くなる証拠といいますか。
ここから幾度も停止を繰り返したなかで、たまたま踏切のなかで停まったところを撮る。
上がらない遮断機に、諦めたクルマが次々とUターンしていく。これも日本海側らしい。
結果、金沢には、3時間30分遅れての到着と相成りました。ちょっと、疲れましたが、特急料金が払い戻されるので、なんとなく、強気になって(アホか)そのまま飲み屋へ直行。
金沢には、いろんな食材が揃っています。
加賀と能登、山海の珍味がすべてあると言う人もいます。
私が、これはいいな、と感じるもののひとつ、金沢おでん。金沢は、おでん、です。
関東や関西のおでんとはまた一風変わっていて、透明のツユが特徴でしょうか。
それでも出汁が浸み渡っていて、しつこくないので、いくつでも食べられるのです。
店によっては、注文を聞いてから出汁に入れるスタイルもあります。
それは、高級店。握り鮨みたいですからね。このお店は大衆店。予め浸けこんである。
食べたいおでんを、片っ端からお皿に入れてもらい、食べる。うまし! うまし!
地元のお酒、万歳楽とか、菊姫とか。結構イケるじゃん、わたし。やばし! やばいわ。
カウンターの横には、山口県柳井市から出張で来たというサラリーマン氏。
大島での、瀬戸内海釣り談義にまで発展してしまい、ぶりぶり酔ってしまう。やばし!
釣りをしていると、全国の沿岸のいろんな方々と、瞬時に友だちになる。やばし!
金沢には、ラーメンもあります(あたり前か)
シメで向かったラーメンは、とても有名なチェーン店。ナルト(金沢の人はハベンという)の中央に書かれている8。これがシンボルみたいです。
国道8号線の通る府県には、必ずあるというラーメン店。なぜか埼玉県にもあるとか。
これを、いっきに、ずるずると平らげた次第ですが、この時にはその記憶もないぐらい
の、酩酊、昏倒、つまりは轟沈。大丈夫か、私。
まったく記憶にございませんって、昔、テレビで見たエライ人の言い訳みたいな、私。
コケコッコーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!
目覚めたら、ここは金沢。あたり前か。フラフラしながら撮ってみた市街地。
金沢市片町。繁華街の中心とか。右側には、再開発中のビルの姿が。
そそくさと出発して、途中、釣具店でアオイソメ(地元では青虫)を買って、
いちもくさん海辺へ向かったのでした。
竿を伸ばしたのは、大野川。
海は大時化でとても釣りなどできる状態でないため、金沢港からさらに一歩奥に入った汽水域の河川で投げる。
ムカシは、カワガレイ(ヌマガレイ)がたくさん居たという汽水の河口。さらに、運が良ければ、越冬しているカワギス(マハゼ)も居るかも、ということですが、、、、、。
釣り座は、河岸の奥が公園になっていました。木谷公園。
案内板によると、木谷とは、加賀藩政時代の豪商で、その邸宅のあったところとか。
海運業を中心に全盛期には、日本橋の三井とタメ線級の財力を成して、ブイブイだったそう。加賀の豪商といえば、銭屋五兵衛が有名ですが、その銭屋さえ、若い頃はこの木谷家で修行をしたと書かれてありました。
さすが加賀百万石、なので、あります。しかし、維新になり、時代は変わり、木谷家も本格的に、銀行業、鉱山事業へ進出。
ところが、結果として、三井さんや、今日の財閥の方々に、負けたのでしょうね。新しい時代は、そう甘くはなかった。末裔の方々は、地元のために活躍はしたけれど、規模を小さくして今日に至るというふうに結ばれていました。
栄枯盛衰、世の無常を感じさせる案内板でした。でも、まあ、まだ解りませんよ。これからも、まだ、なにがあるか解らない。
そういう世の中だなあ、と想ったりするのですけどね。
と、、、、前向きに物事を考えて、黙々と打ち返す私なのですが、アタリは一向にない。
奮発して、針にはアオイソメを3つもつけてみたのですが、齧られた形跡もなく。
汽水域らしく、潮の干満で、道糸は適度に流れて、いい感じはするのですけど、巻いて戻した仕掛けには、魚の反応は皆無。
カワガレイとか、カワギスとか、それは、遥か昔の夢物語だったような心情に。
パックロッドと同時に、カニ網も投げ入れてました。
みかん袋に入れたエサは、コンビニで購入したサンマの煮付け。
前回の津軽にて、釣り落とした(?)モクズガニの遡上を目論見ましてね。
匂いあり、脂ありで、期待の寄せ餌だったのですが、、、、、、、、。
一瞬の根掛かりのち、そのまま持ってきたら掛かっていた牡蛎。
中身がちゃんと入ってました。牡蛎といえば、石川県では能登の内浦の養殖が有名ですが、金沢でも牡蛎は育つ。大野川は汽水域ですからね。
佐渡島の加茂湾のような、とても良好な状態で育つのでしょう。
持ち帰って開けて食べてみるか? 迷ってしまうも、結局、河へ戻しました。
ここで、大野川を諦めて、思い切って海側への転進を決意。
内灘海岸の放水路へ向かう。
途中、内灘駅の踏切を渡ると、懐かしい電車の顔が並んでました。
たしか、京王帝都電鉄の井の頭線の電車ですね。
リタイヤしたあとも、金沢ではまだ現役バリバリで頑張っていました。
内灘海岸へ向かう。
時化状態でした。内灘といえば、五木寛之さんの『内灘夫人』を思い出します。
とっても熱い小説です、いまでも、たまに読み返して、熱くなってしまう。
私ははるかに、若輩の世代ですが、先輩たちの世情や血潮を思い浮かべて、熱くなる。
読後、必ずカラオケが唄いたくなり、フォークルやユーミンや。
『内灘夫人』の舞台となっている、砂丘から見下ろす日本海。
内灘の放水路。放水路とは、内陸側にある河北潟との間に切り開かれた水路のこと。
そこを防潮水門によって堰き止めて、海水と淡水とを分けている場所です。
海側には、防波堤が築かれているため、高波でも釣りは出来る、、、と判断。
アオイソメを、やはり3つつけて投げ入れました。
防波堤の外では、浪の花ができていました。
ここへ風が吹き込むと、空中に舞ってキレイなのだそうですが。
滞留したままだと、ただの潮の泡のようで、なんだか公害の海にも見えてしまう。
でも、これ以上、風が強まるのは困るので、留まっていなさいね。
おおおおおおおおおーーーーーーーーーーーっ!!!
なにかキターーーッ、な図。ついに。
しかし、しかし、また、いつもの、しかし。
ゴミばかりを引っ張る展開の、しかし。
時化の海は、防波堤の内側に大量のゴミを集めているのでした。
かなわんわあ、おもし! おもし! パックロッドでは、キツか。
捨てられた傘まで引っかかってくる始末。
「弁当忘れても傘忘れるな」
これは、北陸地方の教訓だそうですが、私には、弁当のほうが大事やけどね。
気持ちが萎えてきて、お腹が空いてきました。
竿を仕舞って、金沢市街へ戻る。
準常連となっている、浅野川ぞい、鈴見橋たもとの焼肉店へ。
このお店は朝から開けており、夜行バスや長距離バスの運転手さんたちも憩うお店。
80歳を超えたママが、やさしく、快活に迎えてくれる、私にとっても憩いのお店です。
飲みたいものを飲み、食べたいものを食べる。
ママが私の顔を見て即座に、入れてあるボトルと氷、炭酸、、、、まだ明るいのに。
バラ肉、レバー、頬肉、ロース、ホルモン、厚揚げ、タマネギ、ナガネギ、食べたいものを片っ端からガスロースターに載せて、片っ端から焼いて食べる。うまし! うまし! うまし! 白菜の漬け物も、おいしか!
寒風吹きすさぶ日本海から戻ってきたこともあって、次第にぶりぶりと酔っていく私。まだ明るいのに。大丈夫か、私。
金沢には、いろんな食材が揃っています。なかで、やはり、一番は焼肉でないでしょうか。もの凄い焼肉の人気。カニやブリや鮨などは、観光に来られた人に食べさせておいて、金沢市民は、焼肉ばかり食べている。
これが、私の率直な印象なのですが、いかがでしょうか。加賀平野でとれたお米も焼肉にマッチしていていて、うまし! うまし! うまし!
結局、今回も、飲むか食べるかしているだけで、本当に、大丈夫か、私。
帰る時間がやってきました。
金沢駅へ入線してくる、はくたか号。新幹線にバトンタッチの直前とあって、いろんな人が最後の姿を撮ろうと集まっていました。
想えば、縁あっての、金沢行き。
はくたか号には、20回以上は、乗ってきたと思います。
上越新幹線で越後湯沢へ。ここで乗り換えて、金沢へ。戻りも、同じコースで東京へ。
東京〜金沢間には、米原回りを含めて、いろんな経路がありますが、航空機を除けば、最短時間となるのが、上越新幹線とき号と特急はくたか号のコンビでした。
これも、いよいよ、最後か。
入線してきた車両とは別に、待ち受けていた車両がありました。
能登半島の和倉温泉から先着していた、これも、はくたか号。
ここで繋がって、越後湯沢を目指すわけですが、和倉温泉、福井、金沢。はくたか号は、
北陸三県すべてを走ってきたのですね。たくさんのファンが、撮影をしていました。
今日は、遅れないでね。
でないと、上越新幹線に乗り継げないから。新幹線は待ってくれないからね。
これも、はくたか号に乗る時に、いつも胸につかえたところ。
でも、これが最後だと思うと、なんだか、とても愛おしくなる見慣れたボディ。
これまで、在来線では、最速の160㎞を誇ってきたそうです。
フェーン現象で、うだるほど暑い北陸の夏。
厳しい北西の風雪に晒される北陸の冬。
ずっと走ってきた、はくたか号。さようなら、私の、はくたか号。
車内では、記念のカードが配られました。
3月14日の土曜日から、はくたか号は、新幹線の名前になります。さらに、途中駅をほとんどすっとばしていく、かがやき号という超高速列車も走ります。
東京と金沢が、大阪へ行くのと、ほぼ同じ時間になるという新幹線のスピードの脅威。
北陸に、どんな時代がくるのでしょうか。
私には想像もつきませんが、また新幹線の通った時に、金沢を訪ねたいと想います。
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