自身三度目の津軽への釣り旅、仕事を終えて新幹線に飛び乗りました。
分かれ行く同行二人。
それまで一緒に走ってきた「こまち」と「はやぶさ」が別れる西陽の盛岡駅。
こまちは秋田へ。はやぶさは新青森へ。
ここからが、より深い、みちのくの旅のはじまりのような気がします。
いささか速度を落とした「はやぶさ号」が新青森駅に着く。
迎えてくれたモニュメントはねぶた祭りでお馴染みの勇壮な姿。
真鯛と山幸彦のコラボにちょっぴりニヒっとしてしまう。これは釣り人の特性?
陽の落ちた駅前には、降り積もった雪が残っていました。吐く息の白さよ。
ああ、やはり青森。ここは青森。湿り気を帯びた冷気が北国を実感させます。
借りたレンタカーで市内の釣具店へ立ち寄り。エサ(アオイソメ)を購入。
町の釣具屋さん。ムカシはどの町にもたくさんありましたね。
おばちゃんが、かなりのオマケをしてくれて、意気も上がります。
そして、真っ暗になった津軽半島への道をイッキに北上。急ぎます。
外ケ浜町平舘の後田港。急行した場所は、HN食堂。
この日は定休日だったのですが、前もって開けてもらっていたのです。
ここへも3度目の訪問。
看板の灯りを消したまま、貸切状態に突入か?
マスターは、弘前の人(右奥)
おかみさんは、半島突端部の、三厩(みんまや)の人。ともに生粋の津軽人なのです。
そして、おふたりには、共通項がある。超のつく、磯釣りの本格派。
みちのくにとどまらず、各地を釣り歩いておられる。若輩の私には、想像もつかない気合いと経歴の持ち主ですが、私の話をうんうんと聴いてくださる。つまり、実り多くて頭を垂れた大ベテランということがよく解ります。
やさしきアニキとアネキの趣き。
釣りはサイコーに楽しい。そして、釣り談義も同じぐらい、楽しくて。贅沢で。
酒精浸透の進行が、みるみる早くなるのもむべなるかな、、、、、、なのです。
イカの刺身、炙ったイカを肴に。
しんしんと更けていく小さな港町、HN食堂の夜。津軽半島、贅沢な時間です、つくづく。
マスターの、お酒へのこだわりは、和洋を問わず。日本全国から世界各地へ。
特注した薩摩焼酎には、お店の屋号が記されていたり。
津軽はまた、酒豪と、演歌の大舞台でもありますものね。
最近、平戸、土佐、、、、大酒呑みの土地ばかり伺っているような気がします。
と、想っているうちに、しどろもどろ、のち、轟沈したらしい。
食堂の小上がりに寝かせていただいたそうですが。
コケコッコーーーーーーーーーーーーーーーっ。
朝です。なぜか布団のなか。
ここはどこだ? 私はなぜここに? 解るのに少し時間が必要。障子を開けると旭日。
海の向こうに、下北半島が見えました。ぼんやりしつつも、ああ、なんて贅沢な時間。
前もってとってあった港で唯一のKD旅館。
食堂からここまでどうやって戻ってきたのか? 記憶がない。
マスターは? おかみさんは? と昨夜のことは心配になりましたが、まずは海へ。
晴れわたっている津軽の海。逸る、こころ。
平舘後田港。気負って振り込むしあわせかな。
対岸の下北へ向けて、海峡筋を狙います。
北側の、津軽海峡を眺めながらアタリを待つ。
予想に反してアタリはある。さすが海峡筋。潮が動きます。ぐいぐいと道糸は動かされ、なにかしらのアタリが。まわりを齧られたエサだけが戻る。
幾度も幾度も。つまりは、生体の反応があることに、一縷の望み。
アタリがあるかないか。魚が触るかどうか。ここに釣りを継続させる気力の有無がかかっているわけでして。
エサ取りの 正体見たり ふくれつら まこぶさ吟ず。
フクさん、あなたはエライ。偉大だ。こんなに冷たい海に、元気なお姿を。
津軽にでもフク来たる。フクだ、春だ、フクだ、春だ、スキップしたくなる。
海へお戻りいただく。
後続して、釣り人が2名来られました。1mもない短い釣り竿。常連さんとのこと。
足元の穴に仕掛けを落としての探り釣り。
しばらくして、茶褐色の魚を穴から引っぱり上げました。
カジカ、ですね。カジカやハゼは種類が多くて図鑑でもなかなか判別できませんがカジカ。クーラーボックスには雪を入れていて、とてもワイルドな感じ。
カジカ、いいなあ。でも投げ竿では長過ぎて、穴の釣りは難しそう、、、、、、。
背後には、カモメが一羽。ずっと佇んでいらっしゃる。
私の獲物を期待するのか? しかし、東風が強まってきて、その冷たいこと!
カモメも諦めて飛び去ってしまい、そろそろ竿を上げるかとなったところ、、、、。
ちょっと重いな、と巻いてきてみたら、おおお、カレイでありませんか。
小さいけどカレイ、フクのあとにカレイ。フクはカレイの予兆だったのか?
ミズガレイ、ミズクサカレイとも呼ぶ種類だそうで、津軽半島の地域性を実感。
小さいので、海へ戻す。
ここでお昼前、溜飲をさげた、というか、お腹が空いてきた、というか。
竿を畳んで、HN食堂へレッツゴー!!! ちなみに同店は朝食からやっております。
昨夜の記憶消失もあり、おそるおそる、暖簾をくぐってみますと、、、、、、、。
「布団をかけたらずっと寝ていたけど、むくりと起きて帰ったわよ」とおかみさん。
「あなたの最初の一杯は大きいのがいいな」と、いきなりジョッキ杯をつくるマスター。
お・は・ず・か・し・い。酔虎、轟沈、爆睡、いつも翌日に猛省を繰り返す私。
しかし、なんて素敵なおかみさんとマスター!!!
お昼のために、用意してくださった大歓待の数々。
その1 クロソイのその場で絞めたお刺身。シコシコした歯ごたえと根魚ならではの上品な肉質は、津軽の海よ、ありがとうございます。
その2 クロソイの煮付け。これまた、歯ごたえを残しながら、とろける濃密さ。
贅沢、あまりに贅沢。感動に打ち拉がれて、その3の、これまた上品な味わいの沖メバルの煮付けを撮り忘れてしまう。しまった。ごめんなさい。
マスター曰く。
「フグもカレイも持ってくれば捌いてあげたのに、、、、」
そんな、滅相もございません、って、以前、アイナメを持ち込んでお刺身にしていただき、ペロリとあっという間に食べてしまったことを思い出す。
バックナンバーにあります。
その4 クロソイのあら汁。クリーンで濁りのない、すっきりしたうしお汁。
ねぎ、お豆腐とのマッチングも素晴らしく、うまか、おいしか、泪がでるごた。
その5 おみやげに、地産のオゴノリ。この味噌汁はたまらんもんですね。
たった3度目の来店なのに、ずいずいと、図々しくなっていく私。
さらに、その6と、連夜の大歓待は続くのですが、その6は本章のラストに↓
今回は、平舘のほかにもう一カ所、訪れたい場所がありました。
HN食堂のご高配を辞して、一旦、半島を南下して蟹田の町を目指す。
道すがら、東風がますます強まってきて、内湾の陸奥湾でさえ白波のたつ様相に。
本州北端の地、津軽らしい海になってきました。
冬枯れの蟹田川の水面に、白鳥のつがいを発見。
カメラを向けると、顔をそらしてしまう。嫌か? シャイなのか?
ギャラ(エサ)を見せたら近寄ったりするのか、つまらぬことを考える。
目指す目的地は日本海側の十三湊。半島を横切って走っていく。
内陸に入ったところで、面白い場所を通過。
ここでは、津軽線、津軽海峡線、そして北海道新幹線の3線がクロスしていました。
新幹線もあと1年で、新青森から函館へ向かいます。自然の色濃い津軽半島に伸びる高架橋はとても異質なものにも見えますが、半島突端付近には新駅も出来るとか。
この津軽にも、どんな時代が来るのか。
折よく、非電化の津軽線のディーゼルカーが、トコトコと抜けていきました。
十三湊、じゅうさんみなと、とさみなと、十三湖と日本海の接点にきました。
この季節には珍しく、まだ太陽が出ています。
しかし、風はますます強く。暴風に近い。間断なく、吹き曝される。強風の名所?
吉幾三さんの名曲「津軽平野」の歌詞の詩情がよく理解できました。
背後の十三湖は、浅い湖。淡水と海水の交わる汽水域なので、濁った水面が特徴。
「十三」とは、13本の河川が流れ込み出来た湖だからとか。
ヤマトシジミが有名です。とにかく強風下、どこかで竿だけは出そう。出したい!
と、、、、とりあえず河口へ降りて、仕掛けにエサをつけて投げてみた図。
投げ込んでみただけ、正直にはこれが精一杯。湖面を渡って吹き付ける風の強いこと。
立っていられない。息するのが限界。冷たい。ソク回収。と相成ったのでした。
ところが、戻ってきた仕掛けにナニかついていて、それはカニ。モクズガニ。
これは珍しい、写真を撮ろうとしたところでポトリ落ちてしまう。残念!!!
正味20分ほどの釣りでしたが、季節の上向いた頃にまた来たくなる河口でした。
新幹線の時間が心配になってきた帰途。
広大な津軽平野は、また多数の河川と水路で構築された水田地帯。
渡る橋のたもとに、さきほど釣り落とした(?)モクズガニのモニュメントがあしらわれる。
背景の山は、岩木山でしょうか?
岩木山と並んで、津軽人のこころの拠り所のひとつ岩木川を渡る。
しかし、このあたりから新幹線の時間がますます心配になり、いかんね、旅人は、、。
広大な津軽平野のごとく、雄々しく、逞しく、生きんと、、、さしかかる日没。
新青森駅まで、かっ飛んで戻ってきた次第であります。
東京へ向かうはやぶさ号の車中。
楽しみにしていたHN食堂のお弁当に手をつける。炊き込みご飯のおにぎりが、その6。
マスター、おかみさん、ありがとうございます。
例えば、上京する若者が、新幹線のなかで母の作ったおにぎりをほおばる。そして母や父や兄弟たちを想う。そんな気持ちにさせるおにぎり。
津軽の海よ、また来たくなるのが、本当の旅。津軽の春、待ち遠しく。
HN食堂のブログはこちら↓です。
http://hamanoshokudou.blog.fc2.com
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<宣伝>
『投げ釣り列島縦断』(メディアボーイ刊・税込み1700円)
全国有名書店、有名釣具店で発売中。問い合わせメディアボーイ社03-3576-4051
投げ釣り列島縦断、で検索を。アマゾン、楽天などでも取り扱い中。
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